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挑め!恋の大鍛錬会 ストーリー

Last-modified: 2015-09-29 (火) 19:30:34

※○○にはユーザー名が入ります。


「まったく!どうしてあいつらは、こう焦れったいんだ!」

ある日、スサノオノミコトの社を訪れたあなたは、悲痛な叫びを耳にする。
日頃豪快な彼らしくもなく、文字通り頭を抱えているスサノオだが、
こうした様相は彼の愛娘・スセリヒメに起因することと相場が決まっていた。

あなたの来訪に気づいたスサノオは、案の定、簡単な挨拶に次いで相談を持ちかける。

「どうにも困っていてな…。ああ、うちの娘とオオクニヌシのことだ。
 お節介だとわかってはいるんだが、焦れったくて仕方ない。そうは思わないか?」

あなたは深々と頷き、同意を示す。

オオクニヌシは快活で誠意あふれる気持ちの良い若者だし、スセリヒメも優しく芯の強い女性だ。
剣術好きという共通項もあり、ともに鍛錬している姿はお似合いと評判高いが、そこまでである。
いかにも思慕を抱いた彼女に対し、オオクニヌシの場合は持ち前の誠実さがどうにも空回り、
当のスセリヒメにすら長期戦を覚悟させる体たらくだった。

お互い憎からず思っているはずの二神だが、彼らの仲がこうも遅々として進まないのは、
あなたや他の神々にとっても大変焦れったい事態だ。
スサノオとしては特に、最愛のスセリヒメを応援したいところだろう。

「何か方法はないものか…」

いよいよ困窮するスサノオへ、あなたはオモヒカネよろしく、ふと思いついた一案を授ける。

曰く、「吊り橋効果」と…。


「さあ、皆々様!本日はまたとない鍛錬の機会でござります!張り切って参りましょう!」
「そうね。お父様のお節介には困ったものだけれど、ここで鍛えておけば、きっと実戦でも活かせるわ」
「さすがはスセリヒメ殿でござりまするな!その意気でござりまする!
 ○○殿、スクナビコナ殿!お二人も、ともに成長を目指しましょうぞ!」
「…何で僕まで?場違いだよね?」

日頃の「試練」に代わり「大鍛錬会」の額も華やかな作戦当日。
あなたの面前には、三者三様の態度が繰り広げられている。

オオクニヌシは早くも気合い充分に素振りを繰り返し、あふれた熱気が広い試練場を満たすようだ。
スセリヒメは上辺こそ実用的な評価を下すが、内心ではきっと、父の意図を汲み決意を新たにしているはずである。
そしてスクナビコナもまた、此度の思惑を敏感に悟ったうえで、抗議の声を上げている。

「こういう事は普通、若い二人で楽しむものだよ?僕ら、お邪魔虫じゃない?」

彼の目は、あなたへ向けて口ほどにそう語っていた。

とは言え、あなたにも言い分がある。
蛇足だろうとは思いつつ、あなたはそっとスクナビコナを物陰へ誘い、顛末を語った。

即ち、世の中には「吊り橋効果」と呼ばれる心理現象があり、時として男女の仲を後押しする際に用いられること。
この「大鍛錬会」も、「吊り橋効果」によるオオクニヌシとスセリヒメの急接近を狙ったものであること。
発案したあなたはスサノオによって見届役に任じられたが、相手は筋金入りの朴念仁ことオオクニヌシ、事態はどう転ぶかわからない。
そこで、ぜひ協力者が欲しいこと。

その協力者の人選において、あなたは日本地域の神々に熱心に声をかけたが、
どれほど有能な神も、オオクニヌシの天然ぶりをかいくぐって二人を縁づける自信を持ち得なかったのだろう。
皆が何かと理由をつけて仲人役を忌避した末、スクナビコナに白羽の矢が立ったことは、賢明にも黙っておくこととした。

ちなみにこのとき、唯一コトシロヌシだけは、ギリシャのクピドを気取って恋の弓取りを務めたがったが、
タケミナカタに「お前の腕でか?」と一刀両断され、泣く泣く諦めたという挿話がある。

ともかく、オオクニヌシの昔馴染みであり、知恵の回るスクナビコナであれば、協力者として願ってもない。
あなたはいっそ大仰な仕草で手を合わせ、改めてスクナビコナへ助力を依頼する。

「…まあいいよ。ちょっと面白そうだもの。その代わり、手抜きは許さないからね!」

スクナビコナはやれやれといった風情で嘆息するが、この問題に関しては決して否とは言わない。
あなたは友人想いの小さな神の協力を得たことを、大変心強く思うのだった。


「…であるからして、今日は存分に己を磨くように!」
「はい!」

独創性に欠けたスサノオの式辞と、それに対するオオクニヌシの返答を合図に、「大鍛錬会」の幕が切って落とされた。
ルールは簡単だ。
この試練場を出発点として、並み居る敵を打ち倒しつつ、日本エリアの各地を巡って自己研鑽に努めることとなる。

「やあっ!」
「せいっ!」

モンスターを真似て作られたスサノオの傀儡を相手どって、オオクニヌシとスセリヒメは早くも愛刀を振るっている。
白刃がきらめく度、しゃぼん玉を割るように傀儡が霧散していく様は、見ていて気持ちがいいほどだ。
あなたも得意の武器を構え、二人に続かんと一歩を踏み出す。

「うわっ!」

背後の声は、スクナビコナのものだ。
身体の小さな彼は、どうしても肉弾戦が不得手となる。
常日頃「僕は武神じゃないんだから、オオクニヌシみたいにはいかないよ!」と言っている通り、
傀儡に追い回されながら、稀に神力を投げつけ、反撃を試みるのが精一杯のようだ。

「大事ござりませぬか、スクナビコナ殿!」

すかさず救援に駆けつけたオオクニヌシが、友人を背に庇って言う。

「このモンスターはスサノオ殿の神力でござりますゆえ、攻撃にも悪意はござりませぬ。
 ですが、スクナビコナ殿。貴殿が冒険で危険な思いをせぬためにも、まずは防御から身につけましょう。
 なに、ご心配には及びませぬ。それがしが手取り足取りご指導差し上げますから、身を任せてくださりませ」
「そ、そりゃどうも…」

鍛錬においては、すっかり指導者めいたオオクニヌシである。
スクナビコナは旧友の常ならぬ頼もしさに戸惑っている風だが、スセリヒメの方でも、思うところがあるらしい。

「…その言葉、私に言ってくれればいいのに」

それは辛うじて声になった程度の小声ながら、すぐ側にいたあなたの耳に、剣戟の隙間を縫って届いた乙女心だった。


合流したアメノトリフネから伝えられた内容は、オオクニヌシら一向に少なからぬ衝撃をもたらした。
とりわけ、スセリヒメの見せた反応は、驚愕と言うべき代物である。

「どうして…!魔神はもう、全て倒したはずよ!アメノミナカヌシ様だって…!」
「ウム。貴君らの働きで、小生の力は戻つてゐる」
「なら、今さら、どんな魔神が残っていると言うの…?」

問いながらも、この場の誰もがある一つの可能性に思い至り、そして、それを確証へと変えていた。
根拠は…自問するスセリヒメの表情、そのものである。
戸惑いと自責の念がない交ぜになった、何とも表しがたい痛切な面持ちを、アメノミナカヌシであれば、どう著すだろうか。

この「大鍛練会」は、そもそもが彼女のために催されたものであった。
やや無謀で、やや的外れであろうと、構想自体に罪はない。
現に、オオクニヌシは実戦形式の鍛練に大層身を入れていたし、スクナビコナでさえ、一定の成果を上げている。
若い面々の一体感が増したという意味では、本来的な目的においても、まるで無効ではないだろう。

しかし、スサノオが気合いを込めた強力な舞台づくりが日本地域に与えた影響は、計り知れないものであった。
傀儡を止めるための仕掛けは微細なモンスターの気を内に止め、その増殖を助ける。
各所に用意した魔神型の傀儡は、入れ子式に魔神の核となり、アメノミナカヌシを捕らえた。
根源であるスサノオは、その責任感の強さからまたも強力なソウルと化しているであろうことに相違なく、
また、動機を与えたスセリヒメは、父の神気の異変を敏感に感じ取って、このような表情を浮かべているのだろう。
皆がそれを汲み取りつつも、言葉にすることを躊躇っている。

だが、静かに切り開かれるべき沈黙の帳を破ったのは、シロウサギガミの頓狂な声であった。

「いけない!オオクニヌシ兄ちゃん、試練場にはヤガミヒメ姉ちゃんが…!」
「しまった!!!」

そうであった。
日本海峡の争乱において注進に駆けつけたヤガミヒメを、もっとも安全であろう試練場に止め置いたのはオオクニヌシであった。
この配慮は全く裏目に出てしまったが、判断を悔いるよりも先にすべきことは、もはや明らかだ。

オオクニヌシははたと膝を打ち、うちひしがれていた面持ちを引き締める。
スセリヒメにしても、同様であった。
うっすらと濡れていた瞳が強い光を取り戻し、前を見据える。

「ヤガミヒメさんを、助けないと」

たとえその女性が恋敵であっても、関わりない。
彼女は恐怖に震えているかもしれず、自分には敵を打ち払う剣があるのだ。
もはや、何を迷うことがあろう。

「行きましょう、オオクニヌシくん」
「はい、スセリヒメ殿」

太刀の重みを確かめ、毅然と背を向けた二人へ、我に返ったアメノトリフネが追いすがる。

「アタイ、送っていくよ」
「ええ。お願い」

そうして言葉少なに歩み去る彼らを見送り、緊張の糸が断ち切られたためだろうか。

「…かっこいいなあ、スセリヒメ」
「ホントだね!オレ、スセリヒメ姉ちゃんってなんか苦手だったけど…優しいひとだ」
「…うむ」

アメノウズメのため息に、シロウサギガミとサルタヒコが賛同する。

「完勝するまで、お酒はお預けだね!」
「そうだねえ。だが、この一戦が益々酒を美味にするに違ひないさ」

スクナビコナとアメノミナカヌシはそっと笑み交わし、決戦の地…試練場の方角を眺めやる。
微力であっても、応援に行きたい。
戦いを旨とする神ではないが、このとき確かに、スクナビコナは鍛練の意味を見いだしたのだった。


天鳥船を囲みの外に着陸させ、オオクニヌシとスセリヒメは、連れ立って試練場へ向かう。

「やあ、大変なことになってしまったね」
「一発入れて、お父さんの目を覚まさせてあげるのよ!」

そう声をかけたのはイザナギとイザナミであり、

「せっかくのボクの美しい剣舞なのに、観客が魔神だなんて!」
「魔神程度がお似合いということではなくて?」

いがみ合いつつ突破口を提供したのは、ヤマトタケルとコノハナサクヤヒメであった。

他にも、騒ぎを聞きつけた神々が続々と集い、助力を申し出る。
そして須く、背を預け、息を合わせて戦う二人に微笑を漏らすのだ。

その関係はきっとまだ、情愛ではない。
しかし、相棒と言っていいものには昇華されたようだ。

試練場の扉は近い。
オオクニヌシとスセリヒメは、今一度顔を見合わせると、階を駆け上がり、その扉を大きく開け放した。