甦れ!恵方のタマゴ ストーリー の変更点
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&ref(日本神社/日本神社1.jpg,240x130); 時間の流れがおかしい―― そう気がついたのは赤土の神様たちが開くパーティーでのこと。 あの時は、昼の時間が異様に短く感じた。 現在もまだ、その不思議な時間の流れ方を感じることが多々あり、 明らかに一日が長く感じたり、逆に一日があっという間に終わるように感じることもあった。 しかし、時計を見ても時の流れが別段おかしくなっている様子は見られず、 神様達も深く気に留めてはいなかった。 「どうしたらいいのかなぁ…」 日本神社に訪れた際に、カヨヒメ様と年神様が途方に暮れている姿を見る、そのときまでは。 ---- 「変だなぁ。いつもこのくらいの時期には大人になってるはずなのに」 年神様は年の初めに生まれ、一年の間に成長し、その次の年にまた生まれ変わる神。 時期的に、すでに大人の姿になっているはずの年神様は、いまだ幼い少年姿のままだった。 「年ちゃん……いつもはこんなこと、なかったのに」 「うーん、いくらなんでもおかしいぜ。カヨが言ってるなら間違いないし……」 カヨヒメ様や年神様も経験したことのない事態らしく、困っている様子だ。 「あれ?カヨヒメちゃんたちで集まってどうしたの~?」 「こ……こんにちは……」 声をかけてきたのは通りがかった吉祥天様と阿多福様の二人だ。 「あ、吉祥天と阿多福…あのね、年ちゃんの様子が変なの」 「様子?どこどこ~?」 「いつもだったらもう大人になっててもおかしくないだろ?けど今はそうじゃなくってさ」 「……ほんとうだ……!こ、子供のまま……」 吉祥天様と阿多福様も、年神様の様子を見ておどろいているようだ。 「年神くんが成長しないとどうなっちゃうのかな~?」 「年ちゃんが成長しないと……?えっと、大晦日来ないし、新年も迎えられないんじゃないかな……」 「とにかく、時間がおかしくなってるってことは確かだと思うんだよな!」 「そ、それ……大変、だよね……なんで、こんなことに……?」 原因は不明なようだ。 神様たちは顔を見合わせて、首をかしげていた。 ---- 「あら、これは?きらきら光っていてとても綺麗ですね」 「ん……?何かの破片か?」 所変わり、日本神社のとある一角。 首をかしげる神々とは離れた位置にある神社の並木の側で、 国御柱神が地面から何かを拾い上げ、隣にいた天御柱神に見せる。 「あまり見かけない材質ですね。宝石とも違うような……」 「確かにな。……ちょっと見せてくれ。どこかで見たことがあるような気がするんだよな」 「あら、天御柱神も?私もこれをどこかで見た気がして……」 龍の姿をした風の神々は数分、謎の破片を見つめてその正体を記憶の中から探る。 「あ!わかったぞ!年神のタマゴの殻じゃないか?」 「……まぁ本当だわ!天御柱神、よくわかりましたね」 「いや、ぱっと思いついたんだ。思い出せてよかったぜ」 「ですが……何故こんな所に年神のタマゴの殻が落ちているのでしょう?」 「そりゃ、年神に聞けばいいんじゃねぇか?」 「それもそうですね。探してみましょうか」 タマゴの殻を懐にしまい、二人はふわりと風に乗る。 そのまま空を舞い、目当ての神様のもとへ向かった。 ---- 「あれ、国御柱神さん、天御柱神さん。こんにちは」 「こんにちは。皆さん揃ってお話していたのですね。お邪魔だったかしら」 「ううん!今俺のことについて話してたんだぜ」 「ん?年神……お前まだその姿なのか?」 「そうなんだよ!普段だったら大人になってるはずだろ?こんなのおかしいぜ」 国御柱神様、天御柱神様がふわりと舞い降りながら合流する。 年神様の姿を見て、国御柱神様、天御柱神様も驚きを隠せないようだ。 「年神の言うとおりですね……何かの異変なのでしょうか」 「異変?え~大変~!ってことは、毘沙門天さんたちにもお知らせした方がいいかな~?」 「そのほうがいいかもな。おかしな事態になってるのは間違いなさそうだ」 「……じゃ、じゃあ…わたしも、ウズメお姉ちゃんに、教える……!」 「年ちゃん、元に戻れるのかな……」 吉祥天様、阿多福様はそれぞれ他の神々にこの状況を伝えるべく一旦この場を去る。 「そう、これを見ていただけませんか?」 国御柱神様が懐にしまっていたタマゴの殻を取り出す。 「あ!それ、俺の殻だろ!なんで国御柱神が持ってんだ?」 「先ほどあちらで拾ったのですよ」 国御柱神様は拾った場所を指さす。 「何であんな所に落ちてたんだ?」 「原因はわからないんだけどな。これはお前が持ってたほうがいいだろ」 タマゴの殻は年神の手に渡されると、一層きらりと輝いて見えた。 ---- &ref(甦れ!恵方のタマゴエリアデータ/海上神社1.jpg,240x130); 海上神社に集合した日本の神々は、 海上神社内にある復元したタマゴの殻に引き寄せられ出現する魔神を 一体一体討伐している最中のようだ。 「サルタヒコ、そっちに行ったよ!」 「……わかった」 アメノウズメ様、サルタヒコ様は息を合わせ、魔神を追い込んでいる。 「こ、こっち……ひゃっ……!こ、こわい……!」 「阿多福ちゃんをいじめちゃだめ~!吉祥天がやっつけちゃうよ~!」 阿多福様と吉祥天様もまた、二人で協力して魔神を討伐しているようだ。 「結構片付けたような気がするが、まだまだ魔神の気配が消えないな」 「それほど、このタマゴの殻には力が宿っているということか……」 「年神を守っていた殻だもの。アタシ達が想像している以上の力を秘めてるのよ」 戦いの様子を眺めながら、大黒天様、毘沙門天様、弁財天様が考察する。 魔神の波は途切れる気配がなく、さすがに神々も疲れの色が出始めてきていた。 「ご丁寧に一体ずつ相手しとったらきりないで!いっぺんに片づけられへんもんなん?」 「これだけ魔神が出現しているとしんどいのう…」 「恵比寿さん、そっちの魔神やっつけるのお願いします~!」 「アンタらも働き!なんでオレばっかせかせか働いとるんや」 「動くと疲れるからだ」 「ぼ、僕も一応頑張りましたよ~!」 恵比寿様、福禄寿様、布袋様は三人で魔神の相手をしていたようだが、 それでも魔神の数は多いらしい。 「少し予想以上だったね」 「そうね……もう少し、神様の人手を増やしたほうがよさそうね」 「……海上神社だからってヒトデは連れてこないようにね」 「ぷぷっ!……くすくす……ヒトデと人手……」 宇賀神様と寿老人様はマイペースに魔神を討伐している様子だ。 ヒトデ……ではなく、人手が足りていない所へ助けに行ったりといった 補助も請け負っているため、あちこちを行ったり来たりしている。 「困った魔神ですこと。イワナガヒメ、大丈夫?」 「は、はい……!サクヤヒメ様、チルヒメ様もお気をつけて……!」 「ワタシ達は大丈夫よ。魔神と戦ったのも一度や二度ではないわ」 「うわっ、やべ」 「……あっ!ニニギ様危ない!」 「ぐえっ」 「……ふふっ、イワナガヒメは本当に頼もしいわ」 魔神と戦闘するコノハナサクヤヒメ様、コノハナチルヒメ様、イワナガヒメ様、そしてニニギ様。 ニニギ様を救おうとイワナガヒメ様はとっさに神具の岩を投げ、 その窮地を救ったものの、ニニギ様は魔神もろとも岩の下敷きになってしまったようだ。 慌てふためくイワナガヒメ様だったが、 コノハナサクヤヒメ様、コノハナチルヒメ様は普段通りといった様子で特に慌てもせず、まだ残る魔神の討伐に向かった。 「これだけ数がいると厄介ですね……」 「なぁ国御柱神。ちょっと力貸してくれ、一気に吹き飛ばして倒すぞ」 「わかりました。天御柱神、せーので吹き飛ばしましょう?」 「おう、わかったぜ!」 国御柱神様、天御柱神様がお互いにかけ声を合わせ、 嵐のような突風を次々と湧いてくる魔神に浴びせる。 魔神は力強い風に吹き飛ばされ、跡にはタマゴの殻が残るのみとなった。 「国御柱神様、天御柱神様、すごいです~!」 「気を抜いてはいけない。彼らは、休む暇も与へてはくれなささうだ」 ナビィが感心する傍ら、アメノミナカヌシ様が指さすほうにはすでに何体かの魔神が出現していた。 「ひゃあ!た、大変です~!」 「フム……此の儘では何時、守りが崩れても可笑しくはないねえ」 「年ちゃん、大丈夫…?」 「大丈夫!けど、これだけたくさんいるとやっつけるの結構大変だぜ…」 「…あっ!年ちゃん、あそこにウミサチさんとヤマサチさんが……!」 「えっ、どこ?帰ってきたのか!」 年神様とカヨヒメ様もタマゴの殻を守りつつ、魔神と戦っていた。 カヨヒメ様の指さす方向には確かにウミサチヒコ様とヤマサチヒコ様が魔神を払いのけ、海上神社へ向かってきている様子が見える。 「年ちゃん、迎えに行こう…!二人とも疲れてるみたい」 「そうだな…!早く行かなきゃ!」 ウミサチヒコ様、ヤマサチヒコ様はたくさんのタマゴの殻を抱えている。 それゆえに魔神に狙われているらしく、逃げるように海上神社へ走りこんでくる。 「年神、カヨヒメ!無事だったみてぇだな!何よりだぜ」 「もう大変だよ!タマゴの殻を狙って魔神が襲い掛かってくるんだ!」 「ウミサチさん、ヤマサチさん、早く中に……ナビィとアメノミナカヌシさんがいるから、そこで休んで」 「海上神社の周りは魔神でいっぱいだぜ!今俺達もやっつけてるところなんだ」 年神様とカヨヒメ様はウミサチヒコ様、ヤマサチヒコ様を海上神社内へ招き入れる。 海上神社内ではナビィとアメノミナカヌシ様がタマゴの殻を守りつつ待機していた。 「ウミサチヒコ様、ヤマサチヒコ様!大丈夫ですか?」 「あぁ、少し疲れたくらいだ、なんともねぇよ」 「こんなにたくさんの魔神が出現してるなんてとてもじゃないけど捌ききれないよ」 「ヤア、草臥れてゐるやうだね。貴君ら、存分に休息を取り給へ」 ナビィはお手製のクッキーをウミサチヒコ様とヤマサチヒコ様に配る。 その傍らで、カヨヒメ様らは不安げな表情を浮かべていた。 「魔神の数がどんどん増えているの。どうしよう……」 「あのタマゴの殻、効果が出過ぎているのかも知れないですね……!」 「このままだと、戦ってる神様がみんな疲れちゃうぜ!早く何とかしないと!」 「な、ナビィも頑張りますよ~!」 戦う力がないナビィも、ナビィなりに頑張ろうと奮起しているようだ。 しかし、不安げな面持ちであることには変わらない。 ウミサチヒコ様とヤマサチヒコ様も疲労していることは目に見えているが、戦いに参加しようとする姿勢を崩さない。 その間、アメノミナカヌシ様は神具の万年筆で宙に何かを書いていた。 「……あれっ、アメノミナカヌシ様?そちらに何か」 「いや。好い天気だなあと思つてねえ」 「アメノミナカヌシも戦ってくれよ!すっげー強いって、天御柱神も言ってたの知ってるんだからな!」 「ヤア、未だ其の気にならないのだよ」 「ちょっと!みんなが頑張ってるときにそんなに呑気でいられるなんて信じられない!」 「ヤマサチ落ち着け!オレらはケンカしにきたんじゃねぇだろが」 「済まないねえ。貴君ら、此処は暫し耐へる時だよ」 アメノミナカヌシ様は顔色を変えず、そのまま続ける。 「打開する策が無いとは未だ謂つてないだらう?」 ---- &ref(バビロニアの魔塔/バビロニアの魔塔01.jpg,240x130); 一方、他地域の神々の様子だが。 各地の神々はそれぞれの地域でタマゴの殻について集めつつ、調べているようだ。 天高くそびえるバビロニアの魔塔の一角では、 アヌ様、エンキ様、マルドゥク様が集めたタマゴの殻を中心にして話をしている最中だ。 「アヌ様、この辺一帯のタマゴの殻はだいぶ集まったように思いますが」 「そうだね。マルドゥクとキングー……そしてこの二人に協力してくれた神のおかげかな」 「魔神もいっぱい持ってたんだ!タマゴの殻な!年神のとこに持ってけばいいんだろっ?」 「バビロニア冥界の方で散らかってたタマゴの殻も合わせて持って行ったほうがいいと思うね」 「キングーのやつ、まだ魔塔のあたりを探してるんだぜ!オレはもうないって言ってんのに」 「念には念を入れてるのかもしれないね」 タマゴの殻を誰が日本地域まで運ぶかといったやり取りをしているうちに 誰かが階段を駆け上る音と、元気な声があたりに響く。 「兄ちゃん!こっちこっち!エンキさんがいるよー!」 「エンビルル走るな!……あ、アヌ様もこちらにいらっしゃったのですか」 「こんにちは、ニンアズ、エンビルル。タマゴの殻を持ってきてくれたんだね」 「ネルガル兄ちゃんがたくさん魔神を倒してくれたおかげだよ!」 ニンアズ様、エンビルル様の持ってきたタマゴの殻も合わせると、タマゴの殻の山はさらに高さを増す。 「結構な量集まったねー……さて、どうやって運ぼうかな?」 「オレだったら日本地域まで一瞬で行けるぜ!そんなに遠くないだろ?」 「あたしたちも手伝うよ!結構たくさんあるから、一人でもっていくの大変じゃない?」 「道中、魔神に襲われる可能性もあり得るからな」 「そんなの大したことないぜ!ムシュフシュだっているもんね」 「ハハ、落としたりしないなら頼もしいんだけどね。……アヌ様?」 ふと、エンキ様がアヌ様の方へ目を遣ると、アヌ様は何かを見ているらしい様子が伺える。 「何か見えたんですかね……ハハ、すごいなー」 「魔神が日本地域に向かっているみたいなんだ。バビロニア地域から外に出さないよう、討伐に行ってくれないかな」 「えっ、バビロニアの魔神が日本に向かってるってこと?大変だよ!」 「アヌ様がそう仰るなら急ぎましょう。ここで立ってるままでは時間がもったいないですから」 「ニンアズは真面目だねー……じゃあ急ごう。マルドゥク、キングーも呼んで手伝ってもらって」 「キングーも?わかった!すぐ連れてくる!」 --- 「砂集めの次はタマゴの殻集めか……時間が乱れる、ねぇ」 エジプトピラミッドの中で、ゲレグ様は思案していた。 「ゲレグ!外で鳥の魔神がうようよしてるぞ!」 「わかった、今行く!セクメト、あんまり無理するなよ」 「大丈夫!こっちにはモンチュがいるからな!」 コノハナサクヤヒメ様らが訪れた時点で一通り集めきっていたエジプト地域の神々だが、 エジプト地域でも魔神が活性化しており、あちらこちらで戦闘が起きているようだ。 「んもう!おイタする子は、アタシのあっつ~い炎でお料理しちゃうわよっ!」 「モンチュ!あの魔神あっちに飛んで行ったっぽいよー!」 「逃げ足の速い子ねっ!逃がさないわよ~!」 「バステト、そちらは大丈夫……そうね」 「ニャ、もうこの辺りは問題ないニャ。オイラ働きすぎて疲れたニャ……」 「もう一仕事頑張ってちょうだい。あちらにもまだ魔神がいるのよ」 「オイラはもうくったくたニャ!繊細なのニャ」 「それならこのコブラの丸焼きはレウにあげてくるわ」 「こ、コブラの丸焼き……!」 モンチュ様、ハトホル様、アヌビス様、バステト様らはそれぞれ魔神の討伐にあたっているようだ。 その一行にゲレグ様、セクメト様が加わる。 「しかし、時間が乱れるなんておかしなことが起きるよねー!どういうことなんだろう」 「年神ちゃんが力を失っているってことだけが本当に原因なのかしら?よくわからないことだらけねっ!」 「時空の魔神……だったか。あれが出現しはじめたときから既に時間がおかしくなってたのかもな」 「時空の魔神?……レウ、覚えてるか?」 時空の魔神は、時間軸を超え未来や過去の神様を捕らえる危険な魔神だ。 エジプト地域の神様では既に未来からトト様、マアト様、バステト様、セクメト様、ネフェルテム様が連れてこられている。 「早いところ解決したほうがよさそうって話?」 「そういうことだな……って、セクメト待て!」 「のろのろしてる場合じゃないんだろ?レウ、行くぞ!」 「セクメトちゃんったら速いんだからっ!アタシ達も続くわよ!」 &ref(エジプトピラミッド/エジプトピラミッド1.jpg,240x130); ---- &ref(インド魔宮/インド魔宮1.jpg,240x130); 「キャー!クリシュナ!今日もとってもかっこよかったわ~!」 「ありがとう、ナーサティアの声援がボクの力になったよ」 インド地域の黄色い声の主はナーサティア様だ。 クリシュナ様の鮮やかな戦いぶりに目も心も奪われているらしく、声援に熱が入っている。 「けど、不思議だね……今日はやたら、ヘビのモンスターや魔神が活発になっているように思うよ」 「ヘビ?言われてみれば確かに、さっきからヘビばかり見かけるわ」 「ヘビだったら、クリシュナに安心して任せられるんだけどなー」 「あぁ、ヴァルナだね。それにダスラも。二人ともどうしたの?」 ヴァルナ様とダスラ様が二人に合流する。 どうやら、ダスラ様はシヴァ様らと離れたすぐあとにヴァルナ様に捕まったらしい。 「今から冥界に行こうかと思ってさ。ヤマに会いに行くんだ、あんたらも来る?」 「ヤマ?彼に何か用事でもあったかしら……」 「俺は無いんで、帰りたいんだけど」 「ダスラ待ってってば!この殻のこと教えてくれたのあんただろー!」 「興味ないんで」 「……その殻、ヘビの魔神を討伐したときに落としたものと同じものだね。見せてくれないかい?」 ヴァルナ様が手にしていたのは間違いなく年神様のタマゴの殻だ。 「これ、日本の神が集めてるんだって聞いてさー!魔宮と大河はともかく、冥界まではまだ探しに行ってないかなって」 「なるほど……そういうことか。じゃあボクはインド海岸に向かおうかな。ジャガンナート達の様子が気になるよ」 「それならアタシもクリシュナについてくわ!ヴァーユもその辺りにいないかしら……風で状況が分かればいいのだけど」 「ヴァーユ?あー……あいつ、ハピに会いにエジプト行っちゃってたな。エジプトにも後で行くかー」 「それじゃあ仕方ないわね。ヴァルナとダスラ、ヤマによろしく伝えておいて!あとエジプトの神様にもね」 「俺は帰るからな」 「ちょ、ちょっとダスラー!お願いだよー!カーラネミが殻を探しに冥界に行っちゃったの教えてくれたっしょ!」 「ダスラったら、なんだかんだ言いつつヴァルナに色々と教えてたんじゃない」 「聞かれたから教えただけだわ。……面倒だな」 ダスラ様は頭を掻きながら、ヴァルナ様に連れられてその場を後にする。 ナーサティア様、クリシュナ様もまたインド海岸へ急ぐ。 --- 「見て下さい~!マーニ、これだけ殻を集めたのです~!」 「ソールの分もいっぱいあります~!頑張ったのです!」 「おぉ!よく探してきたのう!感心じゃ!」 「まぁ、僕が一番集めたんだけどね。どう?結構量があるでしょ」 「うむ……皆よくこれだけの量を集めたな」 モフモフ同盟のメンバーであるソール様、マーニ様、エオストレ様が集めてきたタマゴの殻の成果をオーディン様、トール様に披露する。 北欧地域のタマゴの殻はサンタの森の神々やモフモフ同盟の活躍により大方集まったようだ。 「みんな、疲れてない?わたしが作ったお菓子、分けて食べてね」 「おぉ~シヴ!気が利くのう!ほら、えぇと……モフモフ団じゃったかのう?お主らも食え!フハハハ!」 「わぁ~!シヴ様のお菓子です~!」 「あったかいです~!」 「お、お菓子?!まぁ……食べてあげてもいいよ、せっかく持ってきてくれたんだからね」 「エオストレ、手にたくさん持ってるのです~!」 「たくさんあるから、焦らなくてもいいよ。ゆっくり食べて」 シヴ様が持ってきたバスケットの中には、様々な焼き菓子が詰め込まれていた。 どれもまだあたたかく、焼きたてであるらしい。 「トールも、どうぞ」 「う、うむ……」 「なーに緊張しとるんじゃ!のろのろしておると、その菓子はワシは貰うぞ!」 「なっ……それは許さん!」 「ふふふ、仲良しだね」 オーディン様とトール様、シヴ様が歓談するすぐ傍で、モフモフ同盟の三人は今後について話し合っている様子だ。 「少し休憩したら、これを日本地域にもっていかないといけないのです~」 「エオストレも日本地域に行きますか?」 「えっ、僕も?……仕方ないなぁ」 「日本地域には、甘いお菓子がたくさんあるのです!」 「そうです~!大福やもなか、おしるこ……金平糖もおいしいのです~!」 「エオストレも一緒に行くのです!」 「そうなの?……いや、僕はお菓子が目当てで行くわけじゃないんだけどね」 意見がうまくまとまり、どうやらモフモフ同盟は日本地域にまで遠征することが決まったようだ。 「モフモフ……そうじゃ、モフモフ同盟じゃった!ワシらもモフモフ同盟に倣って、再度殻集めに向かうかのう!」 &ref(雪の森/雪の森1.jpg,240x130); ---- &ref(中国山脈/中国山脈1.jpg,240x130); 中国地域の神々は、見つけた申公豹様とタマゴの殻を一か所に集め、 今後の動向について話し合っている。 「あーあ。僕を捕まえたって何の得にもならないのに」 「ふむ。君が持っておったタマゴの殻を見てから同じことが言えるかねぇ」 「たまたま拾っただけだよ。それなのにこの扱い……」 「ごめんなさい。もう少し辛抱してもらえないかしら?」 申公豹様はタマゴの殻をいくらか隠し持っており、現在はその殻を全て没収された様子だ。 ジョカ様、霊亀様、神農様はその量が想像以上のものだったことに驚いている。 「すっごぉい!これ一人で集めたんだねぇ~!」 「キラキラしていて綺麗だったから集めてみただけ。もういいでしょ、離してくれない?」 「神農、まだ申公豹のことは捕まえていてくれないかい?」 「わかった~!えへへ」 「こんなにたくさんどこに隠し持っていたのでしょうか……狂暴化しなくて何よりですね」 タマゴの殻をうまく隠し持っていた申公豹様に感心していると、 日本地域に向かう道中、中国地域に差し掛かったケルト地域の神々が声をかける。 ヴァハ様、グウィディオン様、アリアンロッド様の三人だ。 「こんにちは。この山奥で美しいレディに出会えるだなんて嬉しいよ。皆、タマゴの殻について話をしているのかな?」 「はい!……あら!ケルトでもタマゴの殻を集めているのね」 「そうよ、タマゴの殻を狙ってたくさんの魔神が襲ってくるから焼きながら日本に向かってるんだ」 「儂らも、そろそろこれを日本に届けようと思っておった所よ。どっこいしょ…」 「ジョウガが戻り次第ね。すぐに戻ると言っていたのでそのうちに戻ってくるかと思うのですが……」 「中国地域の神々よ、ここで出会えたことも何かの縁です。私達も共に協力しましょう」 「そうだね。ここで力を貸さないというのは無粋と言うものさ」 「ありがたいわ。ではタマゴの殻を運び出しましょう」 すぐさま、ジョカ様、霊亀様はタマゴの殻をまとめ、持ち運ぶよう手配する。 かなりの重量がありそうな様子だったが、 ジョカ様は持ち前の怪力で軽々と持ち上げ、霊亀様の亀もまた難なくその背に殻を乗せた。 寸刻おいて、ヴァハ様ら一行とは違うケルトの神々の一団が通りかかる。 ダヌ様、ボアーン様から話を聞き、力を貸すこととなったスカサハ様、ダグザ様だ。 「ダグザ、こっちの方向で問題ないのかい?日本地域も難儀だねぇ、世界各地に出向いて殻集めなんてさ」 「そうそう、そっちで間違いないはずだぜ。他にも手伝うことあるなら、ついでにやってくるか」 「ダグザ!スカサハ!やっと来たね。こっちこっち」 「あぁヴァハとグウィディオン、アリアンロッド。中国の神と合流できてたのか」 「おかげさまで、迷ったりはしなかったわ。グウィディオンが道を知っていたおかげね」 「以前、妖術について研究しに訪れたことがあったんだ。その時には、中国の神々に色々とお世話になったよ」 「いつの間にそんなことを……」 「おっと、ヴァハ。妬くことはないよ、その時尋ねたのはヨウセンという男の神様だからね」 「誰も妬いてなんかいないってば!あーっ、もう腹立つ!」 加えて、ちょうどよくジョウガ様が鉢合わせる。 ジョウガ様は布でくるまれた包みを抱えているようだ。 「ジョウガ!お待ちしておりました」 「お待たせしてしまい、申し訳ございません……わたくしもこの、タマゴの殻を日本地域へ運ぼうかと」 ジョウガ様の手にしていた包みの中はタマゴの殻でいっぱいになっていた。 コウゲイ様とホウモウ様が見つけて集めた分なのだという。 「どうせ行き先が同じなら、一緒に行かないかい?」 「そうだな!そのほうが安全だろうしな」 「あぁ、ありがとうございます。とても心強いですわ……!ぜひ、ご一緒させてください」 一向にジョウガ様を加え、神々の一団は日本地域へ向かった。 ――申公豹様、神農様を除き。 「お留守番お留守番っ!お留守番だぁ~!」 「はいはい」 「あの王様一向は来ないのかな?……まぁ、そう簡単に他所の土地に来るようなたちじゃないか」 「王様~?アハハ!ケルトにお知り合いいるのぉ?僕もねぇ、ケルトにお知り合いいるんだよぉ~♪えっと、でぃ……」 「ディアン・ケヒトのこと?」 「あーっ!そうそう~!すっごぉい!物知りだねぇ~!いい子いい子~」 笑顔で頭を撫でる神農様にため息をつく申公豹様だったが、その表情は何か別のことを考えているようだ。 ---- &ref(赤土の大地/赤土の大地01.jpg,240x130); アステカ地域と赤土地域、南の島地域の神々は合流し、お互いに状況を共有する。 現時点ではチャンティコ様、ショチピリ様、ヒイアカ様、カネ様、コヨーテ様、イクトミ様、レイヴン様が集っているようだ。 「そうそう、タマゴの殻がお花畑に落ちていたんだ~」 「ショチピリ、それはさっき言ったでしょ!とりあえず、アステカ地域はそんな状況だよ」 「そっか……エクチュアさんってすごいね、先回りして集めちゃうなんて……」 「魔神もたっくさんやっつけたんでちょ?とっても強いのね!」 「レイヴンも先回りして殻集めてたんだぜ!すっげーよな!」 「当然だ。砂事件のこともあるからな、不可解なものは回収しておくに限るだろう」 「はは、物を拾うのはコヨーテの専売特許だったってのにな。いつの間にレイヴンも下見るようになったんだか」 「レイヴン!今度は棒拾おうぜ!木の棒!それで、集めたら色んなとこに投げてまた拾ってくるんだ!」 「俺はそんな頭の悪そうな遊びはしない」 この神々の地域では魔神討伐も一通り済ませているため、 他地域と比べて落ち着いて状況の考察ができているようだ。 ……が、集ったメンバーがメンバーだっただけに、あまり進展していない様子。 「あたちたちは日本に行ったほうがいいのかな~?」 「日本地域に行けば、何かお手伝いできることもあるかもしれないよね」 「でも、各地域に神様がいるとはいえ……あまり留守にすると返って危ないかもしれないんだよね」 「それは言えているな。こういった異常事態は魔神がいつ、どれだけ出現するのかもわからん」 「レイヴンレイヴン、話するときは顔見て話さなきゃダメだぜ!」 「う、うるさいぞ!」 「レイヴンのやつ、むっつりでね。かわいい女の子と向き合うと緊張しちゃうのよ」 「そんなことは……!」 「赤土の神様って面白いね~、アステカの神様も、みんな仲良しなんだよ~」 「南の島の神様も、みんな仲良ちよ!」 「……全然話が進まない……もうっ!まじめにやって!」 痺れを切らしたチャンティコ様が一喝し、一旦その場の雑談をリセットするも、 反省しているのかいないのか、この場のメンバーは皆へらへらと笑っている。 「もしかしたら、この三つの地域以外でまだカケラを集め終わってない地域があるかもしれないよ」 「そっか……そっちのお手伝いに行けばいいのかな」 「お手伝いだったらあたちも得意よ!」 「うん!みんなで手分けしよう!その後に日本地域に行こう!」 結託し各地に散ることに決めたチャンティコ様、ヒイアカ様、カネ様。 ショチピリ様もチャンティコ様に引っ張られ、この場を後にした。 後に残ったのは赤土地域のトリックスター三人組だが……。 「さて、俺たちはどうする?赤土に戻っても構わないが」 「日本?にいかねーの?なんか大変なことになってるんだろ?」 「あの力の宿った殻を集めているんだ。魔神が出現している可能性が高いな」 「ははぁ、魔神ねぇ……コヨーテ」 「魔神!倒せばいいのか?体動かすのだったらがんばるぜ!」 「じゃ、決まりだな。ちょっくら散歩するには丁度いいかね?」 ---- &ref(甦れ!恵方のタマゴエリアデータ/海上神社1.jpg,240x130); 混戦状態が続く海上神社。 アメノミナカヌシ様の言う通り、耐え忍ぶように戦っていたが さすがに厳しくなってきたようだ。 「あ~疲れた!ワシはもう寝る!」 「ちょい待ちぃ!まだ魔神おるで!」 「恵比寿さ~ん!よそ見は危ないです~!うわっ」 「布袋ーっ!足元に気ぃつけぇや!」 「恵比寿や布袋、福禄寿達も大変そうね……」 「寿老人、八福神の方は大丈夫そう?アタシたちも助っ人に行くべきかしら」 「大丈夫よ、あの子たち強いもの。弁財天こそ、ギリシャで飲んだお酒が残ってない?」 「なぁに、ちょっとふわふわしてるくらいがアタシにはちょうどいいわ。気分がいいもの~!」 「ふわふわしてる弁財天……クスクス……はんぺんみたい」 相変わらず寿老人様の笑いのツボはよくわからない。 七福神は皆マイペースに魔神と戦っているようだ。 「毘沙門天さ~ん、頑張って~♪」 「わかったからそこから動くんじゃないぞ」 「毘沙門天さんかっこいい~!阿多福ちゃんも毘沙門天さんのこと応援しよ~♪」 「う、うん……。が、頑張って……ください……!」 「毘沙門天も大変そうだね。面倒見がいいというか」 「案外、まんざらでもないのかも知れんぞ」 「大黒天、宇賀神。余計なことを言う暇はないぞ」 吉祥天様、阿多福様の声援を受け、魔神と戦う毘沙門天様。 毘沙門天様に突っ込まれた大黒天様、宇賀神様も戦闘に加わる。 「サルタヒコ、ちょっと休憩しよう?見るからにくたくただよ~!」 「……いや、大丈夫だ。……アメノウズメ、下がっていたほうがいい」 かなりの数の魔神を相手に戦ってきたサルタヒコ様、アメノウズメ様だが、やはり疲労の色が見えていた。 その二人に、ウミサチヒコ様とヤマサチヒコ様が駆け寄る。 「サルタヒコ、アメノウズメ!大丈夫?アタシ達も手伝うよ!」 「ヤマサチヒコ!ウミサチヒコ!アタシは大丈夫だよ、サルタヒコが守ってくれたから……サルタヒコのこと助けてあげて!」 「おっしゃ、わかったぜ!サルタヒコ、あとは俺らに任せときな!」 「……ありがとう」 気を改めて魔神と対峙する神々。 その数に圧倒されつつも、何とか耐えている様子だ。 そこに、なにか機械的な音が近づいてくる。 ギリシャ地域の神が追加でタマゴの殻を届けに来たのだ。 「よーし、ここが日本地域だな?」 「すごい!ヘパイストスのチャリオットってこんなに早いんだね!」 「ん?ギリシャの……ヘルメスとフォルトゥナだったか。タマゴの殻を運んできてくれたのだな」 「や!さっきぶり!ギリシャまだたくさんタマゴの殻があったから、追加で持ってきたんだ」 「アタシも、ちょっと用事があってきたんだ♪年神ってどこにいるのかな?」 「年神くんなら、海上神社の一番奥にいるよ~!タマゴの殻を復元してるところ!」 「そっか、ありがと!じゃあお邪魔しちゃうよっ!」 「オレもちょっとは手伝っていかないと罰当たりかな。ま、前払いってことでね♪」 「……む?!あの饅頭は……!?」 フォルトゥナ様は吉祥天様、阿多福様に導かれて海上神社の奥へと向かう。 ヘルメス様は日本の神々とともに魔神の討伐に加わることとなった。 「あー……イワナガヒメと一緒にいると、魔神からの攻撃も大したことなく感じるわー」 岩の下敷きとなっていたニニギ様だったが、イワナガヒメ様が岩を退け、事なきを得たようだ。 「あらニニギ。まだ生きていたの?フフ、頑丈なのね」 「あっちの魔神、まだぴんぴんしているから生きているついでに倒してきてくださらない?」 「ちょっと扱い雑過ぎない!?」 「に、ニニギ様……そ、その……わたくしでよろしければ、お手伝い、いたしますわ……」 「あっははそれはちょっと……」 「いいのよイワナガヒメ。気を負うことなんて」 「神様だもの、岩の下敷きになることくらいあるわ」 「えっ?!ないっしょ普通」 ニニギ様の無事を会話で確認し終わったところで アイヌから駆け付けた神……サマイクル様、シランパカムイ様と鉢合わせる。 タマゴの殻を抱えつつ、日本の神々が戦っていることを見越して日本地域に駆け付けたらしい。 「少しばかり出遅れたか?すまない」 「日本の神様、助けに来たよ!僕たちでもできることあるかな」 「あ……!アイヌの……あ、ありがとうございます」 「何?手伝いに来たの?助かるわー」 「ぼ、僕……戦いは得意なわけじゃないけど……日本の神様にはお世話になってるんだ」 「彼はそういうが、アイヌ自慢の樹木の神だからな。任せられるところも多いはずだ」 「頼もしい限りですわ。ねぇチルヒメ、あちらの魔神討伐手伝ってもらわない?」 「そうね、ちょうどよかったわ。アイヌの神様の戦いも見てみたかったの、お願いできる?」 「ま、任せて!ちょっと怖いけど、スセリヒメ姉ちゃんやオオクニヌシ兄ちゃんに稽古してもらったんだ、大丈夫だよ」 コノハナサクヤヒメ様、コノハナチルヒメ様はシランパカムイ様と魔神討伐に向かうことに決めたようだ。 「そうだ。タマゴの殻はどこにおさめればいい?」 「えぇと……海上神社の奥に、年神様やカヨヒメ様がいらっしゃいますわ。お二人が管理しているかと……」 「そうか。私が中に入っても構わないか?」 「いいんじゃないの?……あ!あれなら俺が持っていくけど」 「手を煩わせてしまっては申し訳ないのだが……」 「えーっと……いや、大したことじゃないし!」 ニニギ様は三人の女神の顔色を伺いながらサマイクル様に打診する。 結局ニニギ様はサマイクル様から預かったタマゴの殻を抱え海上神社の中に入っていくこととなった。 残ったイワナガヒメ様は、海上神社の奥……本殿へ向かう道を神具の大岩で塞ぐ。 「これでひとまずは大丈夫……魔神を近づけさせるわけにはいきませんもの……!」 勇気を振り絞り、イワナガヒメ様は海上神社を守ることを決意する。 ---- 本殿には、世界各地から集められたタマゴの殻がおさめられていた。 年神様、カヨヒメ様、ナビィ、アメノミナカヌシ様が待機している中に フォルトゥナ様とニニギ様が合流する。 「俺も早く戦わないと!みんな頑張ってるのに、俺だけ安全なところにいるのはイヤだぜ!」 「年神とカヨヒメってここにいるのかな~?あっ!いたいた!」 「ギリシャ地域とアイヌ地域分のタマゴの殻を持ってきたよ。結構重くてしんどい」 「フォルトゥナ様、ニニギ様~!お待ちしてました♪」 「ヤア、よく来たねえ。タマゴの殻は、其処に収めてゐるよ」 ナビィに案内され、フォルトゥナ様とニニギ様がタマゴの殻を置く。 「時間が乱れてるのは年神の力が失われたこともやっぱり一因になってるみたい。運命にも影響が出ちゃってるんだ」 「なんでだろう…原因はわからないの?」 「えーと……アタシの地域にも時間を管理する神様がいるんだけど、どこ探しても見つからないんだ」 「時間を管理する神がいなくなっちゃってるから俺が力を失ったり時間が乱れてるのか?」 「その可能性もあるかもしれないって。アタシは運命を管理してるから、詳しくはないんだけど……」 「成程ねえ。しかし、このタマゴの殻の分で、年神の力もある程度は戻るのではないかい」 「えっ?!それってつまり……」 「さう謂ふ事さ」 「年ちゃん……!」 不安や緊張が解けたのかカヨヒメ様の表情がほころぶ。 「じゃあ早く成長して、みんなを助けに行かなきゃな!」 ---- 他地域の神々が駆け付け、 場が好転したように見えた海上神社で戦闘する神々だったが、 タマゴの殻の力によって強さを増した魔神との戦闘は、なかなか厳しい戦いのようだ。 特に蜜柑鬼という魔神はすさまじい力を持ち、姿を変え襲い掛かってくる強敵らしく、 さすがの神々も手こずっている様子だ。 「硬いし力強いなんて、やっつけるの大変ですよ~!」 「……」 「おい福禄寿!どこ行く気や」 「疲れたから寝ようと思っただけだ」 「む……神技も効かないとなると厄介だな」 「特別効果のある神技を持った者がいるだけ救いか」 「僕らはその神様を守りつつ戦えばいいんだよね。粘り勝つのは得意だよ」 「毘沙門天さん、大黒天さん、大丈夫~?宇賀神さんも気を付けてね~!」 「ま……魔神がいっぱい……!わ、わたしも戦わなきゃ……」 「阿多福、吉祥天、あんまり前に出すぎないようにね!」 「弁財天も気をつけろよ、あの魔神は結構手ごわいからな」 「天御柱神、早めに決着をつけましょう。戦いを長引かせるとこちらが危険ですから」 「ああ!」 海上神社を守るイワナガヒメ様は、この戦いの様子を固唾を飲んで見守っていた。 その時、入口をふさいだ神具の岩が軽く動いたのを感じる。 「イワナガヒメ様~!こちらの岩をどかしていただけませんか?」 「! 少々お待ちくださいませ……!」 「ありがとうございます~!守っていてくださったんですね!」 イワナガヒメ様が岩をどかすと、中からナビィ、アメノミナカヌシ様、ニニギ様、フォルトゥナ様、カヨヒメ様、そして年神様が出てくる。 「悪いな、待たせた!今から俺も戦いに加わるぜ!」 年神様は幼い姿ではなく、立派に青年の姿へと成長していた。 タマゴの殻から力を取り戻す作戦が成功したことを確信し、イワナガヒメ様は安堵する。 「年ちゃん、あそこで神様が魔神と戦ってる……!いかなくっちゃ」 「任せとけ!皆手伝ってくれてありがとな。あともう少しだけ力を貸してくれ!」 カヨヒメ様と年神様は魔神と対峙する神々の一向に加わる。 取り戻した力はすさまじく、成長した姿と合わせてその戦いぶりは疲弊した神々を鼓舞したようだ。 「ヤア、あのタマゴは間違いなく年神のタマゴだと謂ふ事だねえ」 「え?それ以外に何があんの」 「かなりの力が集まつてゐるが、其れを制御する事が出来るのは本人だけと謂ふ事さ」 「は?じーさん、それがどうかしたの」 「否、独り言さ。さて、小生の出る幕はもうないだらう。カミムスビの大掃除も、終わつてゐる頃合ひかな」 「いや、帰らないでよ!まだ大変な状態っしょ」 「フム……面白いモノを見せて貰つたからねえ、少しばかり礼をしておこう」 アメノミナカヌシ様はニニギ様と傍にいたイワナガヒメ様に小さな袋を手渡す。 中にはたくさんの金平糖が詰められていた。 「こちらは金平糖……!わたくしがいただいてもよろしいのでしょうか……ふふ、可愛らしいです」 「おいじーさんそういうことじゃなくって……」 金平糖に目線を移したつかの間に、アメノミナカヌシ様は姿を消していた。 「ニニギ、イワナガヒメ!二人で神社守っててくれよな!」 「へ?お、おう」 「は、はい!」 立派に成長した年神様の背を眺めつつ、イワナガヒメ様は再び入口をふさぎ、ニニギ様は金平糖を口にした。 |